Region[リージョン] No.20 | 渕上印刷
22/48

いた鹿児島出身の中原慎一郎さん(ランドスケーププロダクツ代表)とタッグを組み、D&D選定基準のもと選んだ。それらはショップの一角に『さつまもの』として並んでいる。沈壽官窯やしょうぶ学園の作品のほか、「さくらじまの椿油」や「指宿温泉サイダー」などあまり知られていないものも多い。鹿児島を訪れる人だけでなく、地元に暮らす人にも新しい発見がある。「鹿児島は個々のものづくりの意識が高い。それは日本の工業のベースを生み出した歴史や文化が背景にあるからだと思います。でも高い意識やプライドが新しい挑戦にはネックになってしまう。それに僕から見れば、鹿児島は桜島があり、食も自然も豊かで温泉もある。地域活性化と言っているけど、他県と比べればあまり困っているようには見えないんです。でもおそらく、新しい一歩を望んでなくはないはず。呼びかけたらすごいパワーを発揮するんじゃないかな。D&Dからの発信がチャレンジのきっかけになれば、鹿児島にも新しいデザインの可能性が広がると考えています」。鹿児島をD&Dの視点で見るナガオカさんは、D&D鹿児島店のオープンと同時に『ddesign travel 鹿児島』も発刊した。この本は毎号1県ずつを取り上げ、各県の観光やレストラン、カフェなど6つの分類をもとに、デザインを含めた独自の基準で選び、紹介しているもの。北海道に続き鹿児島が第2弾となる。編集長はナガオカさん。しかも、ほとんどの取材や原稿執筆をナガオカさん自身が手掛けているというから驚きだ。設計者である髙﨑正治さんと20年ほど前に会ったことを思い出しながら訪れた輝北天球館を「不時着した宇宙船のよう」と表現したり、桜島を「原始時代のような生命力を感じる風景に見えた」と形容するなど、ナガオカさんの視点や考えのフィルターを通した紹介文には本音も入り交じり、読みごたえ十分の一冊となっている。忙しい立場でありながら、短期間の間に自ら何度も足を運び、作り手を訪ね、多くの人と逢い、土地のものを食べる。仕事とはいえ、ここまで人任せにしないのも珍しい。責任感だけではなく、きっと好きでたまらないのだ。新しいことに出会うことが、そこで新しい人とつながることが。ロングライフとはなくならないことオープン2日前。D&D鹿児島店のレセプションパーティーの会場では、ナガオカさんの積み重ねてきたつながりが大きな人の輪になっていた。その輪を見つめるナガオカさんの顔は、ニコニコとうれし気だった。ナガオカさんは自身の著書『ナガオカケンメイのやりかた』で、ロングライフを「なくならない、ということにも訳せる」と書いている。ロングライフデザインを介した人とのつながり、気持ちのつながり、時代のつながり…形や色は見えないそれらもまた、ロングライフ(なくならない)デザインと呼べるのかもしれない。PROFILEながおか・けんめい1965年、北海道生まれ。日本デザインセンター原デザイン研究所を経て、97年ドローイングアンドマニュアル有限会社を設立。2000年、デザイナーが考える消費の場を追求すべく、「D&DEPARTMENT PROJECT」を開始。日本デザインコミッティー会員。主な著書に『ナガオカケンメイの考え』『ナガオカケンメイのやりかた』『ナガオカケンメイとニッポン』など。http://www.d-department.com❶桜島の椿油や指宿の温泉サイダー、シラスを原料としたグラスなど、鹿児島からセレクトされた商品も。❷家具売り場には、カリモクやマルニなどの定番で飽きのこないソファやテーブルがずらりと並んでいる。❸2008年に開催された「デザイン物産展ニッポン」。鹿児島からは薩摩切子や種子島宇宙センターとともに小誌も選定された。❹『d design travel 鹿児島』。新幹線「つばめ」をデザインした水戸岡鋭治さんや、鹿児島大学の焼酎学講座なども取材している。❺レセプションパーティーには大勢の招待客が訪れ、ミニライブも開催された。満面の笑みのナガオカさん。*選定基準1 時間が経っているもの2 その土地に生まれ育った人が認めているもの3 全国で通用するもの*12345ちんじゅかん20

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です