Region[リージョン] No.27 | 渕上印刷
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今年1月、鹿児島市内のデパートで、鹿児島の郷土菓子であるこっぱもちをアレンジした商品や、甑島で生産された材料を使ったジャムや米などの即売会が開催された。「思った以上にたくさんの方に来ていただいて、本当にうれしかったです。懐かしい味が受けたのかなと思います」と話すのは、即売会を実施した山下賢太さん。甑島で農業と加工品販売を手掛ける[東シナ海の小さな島ブランド社]の代表を務めている。 会社を設立したのは今から約2年前。現在山下さんは、米やしいたけなどを栽培し、島の素材を使った菓子やつけ揚げ、塩などの加工品を生産・販売している。手伝ってくれる方が数名いるが、フルタイムで働いているのは山下さん1人。県内外を飛び回る忙しい日々だ。 中学卒業後、騎手を目指してJRA日本中央競馬会競馬学校に入校するも中退し、キビナゴ漁の漁船乗組員として働いた。その後大学に進学して地域デザインを専攻し、京都の民間企業を経て2年半前に甑島にUターン。なかなかユニークな経歴を持つ山下さんだが、ひとつだけずっと変わらなかった思いがある。それは、生まれ故郷の甑島に対する思いだ。「研究テーマはいつも甑島で、先生に『また甑島か』と言われるほど故郷に対する思いは強かった。島に帰ってきて働くのは、僕にとっては自然なことでした」 とはいえ、甑島で農業を生業として生きていくことは簡単なことではない。もともと農地が少なく、離島のために島外での販売にはコストもかかる。もちろん、農家の経験もない。両親からは大反対を受けたそうだ。 しかし農家ではなかったからこそ、常に「お客さまの目線」で農業に向き合うことができた。消費者が購入するために、まずは魅力的で物語のある商品を開発する。売り先がないなら、自分でルートを作る。商品の需要に合わせ、原料を作るための農地を調整して投資のリスクを減らす。最終的に商品を手にする消費者の立場で考えることを、山下さんは大切にしている。そしてそれは、最終的な目標でもある「甑島のおいしい風景をつくる」ことにもつながっていく。「甑島では高齢化が進んで、耕作放棄地が増えています。それらを再び開墾して、稲が豊かに実る美しい風景を取り戻していきたい。そして若い人が島で働けるような環境を作っていきたいと思っています」 現在、新しい事務所を設計中。3月には東京のアンテナショップでも直売会を開催した。今後は豆腐の製造にも挑戦していく考えだ。その根底にあるのは、甑島に対する深い愛情。山下さんの屈託のない笑顔の裏には、島を思う強い意思が隠されていた。小さな神社の前の土地を借りて、椎の木を使ったしいたけづくりにも取り組んでいる。スタッフの横路麻由さん(右)と、インターンで来ていた大学生の小宮明子さん(中央)と。13241. 「オソばあちゃんのこっぱもち」。2. 太陽ジャムシリーズ。八朔(はっさく)、金柑、すももなどの種類がある。3. 「季節の石鹸」。写真は椿から作ったもの。4. ペーパークラフト「上甑島の家」。11

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