Region[リージョン] No.27 | 渕上印刷 15/40

Region[リージョン] No.27 | 渕上印刷
15/40

全面ガラス張りや筐体で囲まれたような独創的なアイデア。近未来的なフォルムでありながら、どこか温かみを感じる部分もある。設計事務所[アトリエ環]の所長、田村孝典さんが設計する建築物は、モダンでシンプルなデザインが特徴的だ。もっとも田村さんに言わせると、「依頼主の希望を形にしただけで、少しも特別なことではない」らしい。「例えば、鹿児島は日差しが強いから、環境が許せば出来るだけ庇ひさしを設けたいのです。気候風土を考慮してデザインしたらこんな形になった。もちろんほかにもたくさんの要素がありますが、僕にとっては素直な設計なんですよ」 小学校に程近い住宅街の中にある2階建ての事務所は、コンクリートの打ちっぱなしの壁が目を引く。奥は田村さんの自宅ともつながっていて、もともと中庭だった部分を改築してテーブルを置き、打ち合わせスペースにしている。事務所の中はほの暗く、とても静か。心地良い緊張感が漂っているという表現がぴったりだ。田村さん以外のスタッフは現在2人。パソコンに向かって、黙々と仕事をしているのが印象的だった。スタッフは田村さんが計画した基本コンセプトと3Dをもとに図面を起こす。さらにそれを田村さんがチェックするというのが大まかな流れだ。「仕事をしているわけですから特別に和気あいあいとする必要はないと思っています。日によってはあいさつ以外、会話がないときもありますよ」 もちろん、デザインについて話すべき時にはとことんスタッフと話し合う。ただ、やるべき仕事が決まっているからこそ、お互いに無駄な会話もなく自分の仕事に集中できるのだろう。 適度な緊張感が、仕事にもいい影響を与える。その考え方は、突き詰めると余計なものは極力省くようになったという、田村さんの設計にも通ずるものがある。[アトリエ環]では営業活動をしておらず、設計した建物を見た人や紹介で来る依頼主がほとんど。ホームページにも「営業活動は不得意です」と明記しているくらいだから、いっそ潔い。「正直、経営者としてはわれながら向いていないと思います(笑)。だからこそ、建物が私たちのメッセージ。これからも依頼主に気に入ってもらえるような建物をつくり続けていきたいですね」いい緊張感を持つことは、いい仕事にもつながる田村 孝典たむら たかのり[アトリエ環]代表1958年、鹿児島県生まれ。一級建築士。九州芸術工科大学環境設計学科卒業。福岡の建築事務所に勤務した後、29歳で有限会社[アトリエ環]設立。2000年、設計した「e-terrace」が第6回鹿児島市建築文化賞を受賞。02、04、08年にも同賞受賞。http://www4.synapse.ne.jp/at-kan/上/上山病院(2009年)下/NZ.Residence(2011年)写真撮影:INFORMERCIAL/三好 芳昭13

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です