Region[リージョン] No.28 | 渕上印刷 25/40

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水害をきっかけに「畳を洗う」発想が生まれる 平成5年8月、同社に大きな転機が訪れた。鹿児島市を中心に襲った集中豪雨、いわゆる「8・6水害」だ。同社も大きな被害を受けたという。い草が原料の畳は、通常であればある程度の湿度調整を行うことができる。しかし大量の水を含むと、たとえ乾燥させても発酵が始まり、カビやにおいが出て再利用することは難しい。しかも浸水によって水を吸った畳は1枚100キログラムほどにもなり、撤去作業に多大な労力を伴った。その時考えたのが、「水や汚れに強く、軽い畳は作れないだろうか?」ということ。その発想で誕生したのが洗える畳「洗畳」だ。「洗畳」は畳表となる素材に、熱に強いポリプロピレンを採用している。ポリプロピレンは家庭用の食品密閉容器にも使われており、安全性も高い。さらに繊維の中に乾燥剤であるシリカゲルを入れることで、い草の調湿性能が再現できた。素材は変えたが、製法は既存の畳と同様。これまで培ってきた技術を存分に生かせる点もメリットとなり、畳の良いところを残しつつ機能性を高めた製品が完成した。存在感のある建材、暮らしに身近なアイテムとして 平成18年11月、「洗畳」は特許を取得。今年2月には、製造業の振興に貢献した人材などを表彰する「第4回ものづくり日本大賞」において九州経済産業局長賞を受賞した。「メディアからの取材も増え、一般的な認知度は高くなったと思います。中でも大きく変わったのは信頼感でしょうか。特許は持っていても類似品が出回っていたり、洗える畳って大丈夫?と心配する声もありますが、安心して検討してもらえる要素の一つになったのは確かです」 発売当初は旅館やホテル、温泉施設などでの利用が多かった。今では一般住宅での展開も増えつつある。オーダーメードで、形や色、サイズを自由に選べ、洋間感覚で活用できるのが魅力だ。さらに、室内に限らず屋外でも使用できるなど、これまでの畳では想像できないユニークな用途も可能となった。 また、濡れても滑りにくく、ヒートショックの軽減が期待できること、設置が簡単という特性を評価され、介護保険対象となっている商品もある。現在、高齢化社会のニーズに幅広く応えようと、新たなアイテムを開発している。喜びを分かち合える心でものづくりをすること 同社が掲げる経営理念は「自分の心の中からわき起こる喜びを、お客さま・関係先、物心とともに喜び合えることを目指す」。小田社長は穏やかな笑顔で、「この理念は当社の究極の姿をイメージした言葉です」と語る。「ものを作ることは人を喜ばすこと、それを決して常に忘れないように。そして仲間作りをすること。商品開発は社内だけでなく、いろいろな方からアドバイスをいただいています。素直な気持ちで知る努力をして、さまざまな意見に耳を傾ける。すると不思議と、ブレーンが増えてくるんですよ」 今は専ら人と会うのが仕事、と小田社長。その後ろ姿を見ながら育った息子の伸さんは、現在営業課長として実務面で手腕を振るい、小田社長と絶妙なコンビネーションで会社をもり立てている。 日本が誇る住宅建材である畳は、「洗畳」によって新たな可能性が見えてきた。これまで続いてきた畳の長い歴史をさらに未来につなぐ意味でも、同社の功績は非常に大きい。今後の新しい展開にも、ぜひ期待していきたい。※急激な温度変化により、血圧や脈拍が急上昇、もしくは急降下するなど体に及ぼす影響のこと。「これからも、畳作りに精進していきたい」と小田社長。株式会社 小田畳商会会社概要所 在 地 : 本社/鹿児島県鹿児島市新屋敷町5-17 工場/鹿児島県日置市東市来町美山1381設 立 : 大正7年資 本 金 : 1800万円従業員数 : 12名業務内容 : 畳製造http://www.tatami1.com/い草の香りが漂う工房で、黙々と畳を作る職人。畳を使ったハガキやコースター、ティッシュボックスなどさまざまなグッズも。company overviewせんじょう※23

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