Region vol.43
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2015年8月15日、桜島の噴火警戒レベルが3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げられ、鹿児島市・桜島の一部地域に避難勧告が出された。鹿児島県民にとって灰が降る程度の噴火は珍しくない。しかし、避難勧告発令という事態には、心穏やかでなかった人も多いだろう。科学的根拠に基づく中立的な情報発信の大切さそんな中、現地・桜島から情報発信を続けた人がいた。NPO法人桜島ミュージアム理事長の福ふく島しま大だい輔すけさんだ。理学博士で火山地質学が専門の福島さんは、データを根拠に、1914(大正3)年のような大噴火がすぐさま起こることはないと考えていた。それでも「観光業への打撃は間違いない。何かしなければ、と思いました」と当時を振り返る。「大丈夫」「安全」と短く発信するだけでは、人々は不安を感じてしまうのではないか。そう考えた福島さんは、あえて「噴火は日常」であることをブログなどで発信し始めた。桜島フェリーや地元のスーパー、コンビニは通常通りの運航・営業を続けていること、桜島ビジターセンターから桜島までは6㎞離れていることなど、客観的で役に立つ情報を流し続けた。その中には、「レベル4では普段の観光はおすすめできないが、桜島の状況を正しく理解した上で来ることは可能」という発信もあった。また、桜島にレベル3の時期がどれだけ多いかを示すグラフや、今回上昇したマグマ量と過去の噴火のマグマ量の比較の表なども作成。火山学の専門家であり、桜島の一住民としての中立的な情報発信だった。福島さんは今こう考えている。「長文にはなりましたが、正確な情報を知りたい人は頑張って読んでくれたようです。安全だけを強調するのは逆効果。観光寄りでもセンセーショナルな報道寄りでもない、科学的根拠に基づく情報発信が大事だとわかりました。『観光はおすすめできない』というメッセージは実験的でしたが、クレームもなかった。みんな、正確で役に立つ情報を知りたいだけだと思うんです」高校時代は文系意図せず地学科へ進学博士号をもつ福島さんは、高校時代は文系クラスだった。「親から公務員になることを勧められていたので、それなら文系かなという程度の考えでした」と笑う福島さん。第一志望は不合格だったものの、地学と英語の成績が良く、担任の教師に鹿児島大学の理学部地学科を勧められた。「理科の教員になって好きなバスケ部の顧問になるのもいいなという軽い気持ちでした」。思いがけず地学の道に進むこととなった福島さんだったが、入学後はすっかり地学の魅力に取りつかれた。「フィールドに残された証拠から、実際に起こった過去の現象をイメージできる。地球の謎を解き明かす探偵みたいだと思いました。また、何億年、何万年という時間、メートル、キロメートルという大きなスケールからナノやミクロという小さなスケールまで扱うから、物事を大局的に見る目も養われたと思います。火山はダイナミックで、現象がイメージしやすいのも面白いところです」と福島さんは語る。卒業研究では、姶良カルデラの大噴火で発生した入い戸と火砕流の「噴火は日常」であることが桜島の魅力になる。桜島ミュージアムの福島大輔さんは、桜島やその観光の新しいあり方を考え、発信し続けている。右/桜島ビジターセンターでガイド中の福島さん。噴火を金額や人柄に例える楽しい語り口に自然と見学者が集まってくる。左/鹿児島大学大学院時代の福島さん(右)。イタリアのストロンボリ山を視察中の一葉。

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